ゾラの
小説や
映画についてレヴューを書いたりしたけれど、ちょうどいいから、関係のあるある絵について書こうと思います。
本当は、もっと前に書こうと思ったのだけれど、なんか色々あって今に至ります。
ゾラの自然主義文学や『ルーゴン・マッカール叢書』については、
前に書いた通りです。
で、取り上げる絵はこちら(→)。
《開かれた聖書のある静物》
フィンセント・ファン・ゴッホ 1885年
ゴッホという画家について書くのではなく、この作品1点のみにしぼって書きます。
なぜこれが、ゾラと関係あるのか?
なぜゴッホはこの絵を描いたのか?
長くなるのもあれなので、一応非常に手短にさらっとゴッホについて言うと、彼の人生は変化に富むというか、奇天烈というか、すごい。
1853年に牧師の家に生まれたゴッホ。自らも説教をしたり、布教活動に取り組むのですが、ベルギーの炭坑地帯であんまりにも熱心に布教をするんですよ。貧しい人を過剰に助けまくったりして。で、逆に奇妙に思われて、伝道師をやめさせられることに。
で、27歳で画家を志します。27歳で。
で、死ぬのが37歳です。
そう、画家としては10年しか活動していない。その10年で残した作品が約2000点。驚愕。2日で1点くらいのペース。
ゴッホについては、もうこのくらいにして。
それで、この絵が何かって言うと、死んだ父親について描いたもの。
聖書は、牧師だった父親を表しています。で、右上の方に、火の消えたロウソクがありますね。これは死んだ父親へ絵の追悼を表しています。でも、このロウソクはもう1つ表しているものがあって、何かと言うと、父の価値観の時代は終わった。古い価値観の時代は終わった、ということ。
あれ、ゾラは?何でゾラと関係あんのさ?
いや、あるんだよ。
右下に、黄色い表紙の本が置いてありますが、それがゾラのルーゴン・マッカール叢書の第12作目、『生きる喜び』なのです。
この『生きる喜び』はゴッホ自身を表しています。ゾラが自然主義文学の代表と言われるように、ゾラの愛読者だったゴッホは新しい価値観をこの本で示し、自分になぞらえているわけです。
古い価値観の時代は終わって、新しい価値観の時代がくるんだ!というメッセージが込められているわけです。
それだけゾラは新しかったし、ゴッホは古い時代を抜け出して、新しいものを打ち出したいと思っていたということではないでしょうか。
ちなみに『生きる喜び』は、当時フランスで熱烈に読まれていた
ショーペンハウアーの哲学への、ゾラなりの回答と言われています。
ショーペンハウアーも読んでみたいけれど、なにせ他に本がたまっているし、今読むと…ちょっと、まずそう……なんで、いずれ読んで確認。
ということで、絵画の見方でした。
こうやってみると、1枚の絵でも色々と意味があるでしょ。