アーティスト 加藤雄太 のブログ
展覧会のレヴュー、本の感想、その他制作の日々の模様など。
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『内藤礼』展
日曜日。
今月は色々と行きたい展覧会が多く、その中に横浜と鎌倉の美術館も含まれているので、気合いを入れて遠出する。

鎌倉へ。
鎌倉ってちゃんと記憶している中では来たことが無い。ほとんど旅行気分。
通りもいい感じに賑わっていて、僕は一気に鎌倉が好きになったよ。

しらす料理屋でランチを食べ、ゆっくり歩いて神奈川県立近代美術館 鎌倉館へ。
『内藤礼 すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している』という展覧会。
展覧会『内藤礼』鎌倉

非常に見たかった展覧会。遠さ故に億劫だったが、ついに行ったのだ。
内藤礼といえば、春にギャラリー小柳で個展を観たのがちゃんと作品を見た最初だと思う。

内藤礼(ないとうれい)[1961-]は、日本のアーティスト。「地上の生と世界との連続性」をテーマに作品を発表している。1997年には、ヴェネツィア・ビエンナーレに日本代表として参加するなど、その評価は国際的だ。

さて、展示だが、結論から言えば、本当に素晴らしかった!!

展示室は2つで、他に屋外のテラス部分に作品がある。いずれもインスタレーション。
こうして書いても作品数が非常に少ないことが分かるだろう。もし、何も感じない人が訪れたなら、5分か10分で充分に見終わる。
しかし、しっかりと作品を鑑賞する態度がある時、この展示量は非常にちょうど良いものとなるのだ。本当に、「ああ、これでちょうどだよな」と。

第1室。
入ると真っ暗で、光源はインスタレーションの一部である豆電球だけ。
天井からは風船が沢山吊られている。暗闇の部屋を見回すと、他にも水の入った小さなビンなど、いくつかの物があることに気づく。

第2室。
床に布が広がっている。

テラス。
池に面した手すりの上に、水の入った小さなビン。
吹き抜け部分には、風にたなびく紐。
通路部分天井から吊るされた紐。

以上で、作品はほぼ全て。
たったこれだけの、しかし豊穣な展示。

全体を通して、共通して感じたことは、見えないものを見させる、気づかせる作品だということ。
小さな作品から、地球的宇宙的な規模のことを感じさせるということ。
である。

例えば、第1室。
豆電球の熱で、部屋は暖かい。熱は上昇するので、部屋の上部にある風船たちはゆらゆらと揺れる。熱による空気の動き。
人が通っても風船は静かに揺れる。その動かされた空気。
何カ所かにある小さなビンは、それぞれ2つ並んで置かれていて、それぞれの水が合わせて1杯分だった。そのことに気づいた時、世界中にあるあらゆることに思いが及ばないだろうか。あるものとあるものとの関係。また、ビンの近くにビー玉があると、水が片方分しか無いという不思議な関係。
部屋の壁には、目立たない突起物がある。もし、明るい展示室に、所謂美術作品が展示してあったら、気づきもしないだろう。しかし、仄かな豆電球が壁に光をあて、ほんのりと突起物の影が浮かぶ。何かに照らされて“存在”するということ。世界には、そのようなことがあふれていないだろうか。

特に僕が好きだったのは、テラスの展示。手すりに置かれた水が入ったビン。これは本当に素敵な展示だった。
水はなみなみと入っていて、表面張力で膨らんでいる状態。
それが、ぽつりぽつりと手すりに置かれている。手すりの外は池。
ふと、このビンの水も池の水も、同じ水である、と気づいた瞬間、小さなビンは小宇宙となり、それはこの池にも彼方の海にも思われた。
また、溢れる寸前の水は、ギリギリの状態、飽和状態を思わせ、それは悲鳴をあげる地球だったりと、あらゆることを連想させられた。あるいは、溢れて涙になる寸前の悲しみの感情とか。

このように、作品自体は小さいが、その作品はどこまでも大きな世界を見せてくれる。
すっと作品が心に入ってきた時、静かに瞑想へと誘われる。

本当に単純な物を使って、本当に単純な置き方がされた作品。それでも1つの確固とした言語となり、語りかけることが可能だという素晴らしい例。

単純で何気なくて、でもそこに世界が現れた。


おすすめ。
はるばると出かけた甲斐があったと心から思う展覧会だった。



[メモ]
2010年1月24日まで
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