『
ウェイキング・ライフ(Waking Life)』
(アメリカ 2001年 101分)
監督:リチャード・リンクレイター
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映画です。
面白かった。
これは、実写の動画を、わざわざCGで着彩した作品。
内容がすごい。これと言ったストーリーはないと言った方が当たっているかもしれない。
主人公の青年が、次々と色んな人に出会って、様々な話をしていく。登場人物たちが、ひたすら哲学的なことを話し合う内容。
実存主義、言語の発達、人間の進化、魂と肉体、時間、映画、生と死、現実と夢、etc......、どこまでもそういった事を話し続ける。
通じて、核となっているテーマは「人間の存在」であろう。
場面はどんどん転換する。何の脈絡もなく転換していく。道を歩いていたと思ったら、カフェなったり、次の瞬間はどこかの室内だったり、大学の講義室だったり、バーだったり、と。ベッドに入っている恋人たちさえ哲学めいた話をしている(男の方はイーサン・ホーク。もちろんデジタルペイントされてるけど)。
あと、スティーヴン・ソダーバーグは本人役で出ている。
映像や転換の具合はクレイジーでトリップする感じ。僕としては、『
イエロー・サブマリン』(重要作品なんで、今度また見たら書きます)を思い出した。他にも、『マトリックス』『攻殻機動隊』『イノセンス』なども関連作品として挙げるべきかもしれない。
トリップムービーだけど、内容は深い。極めて真面目に語っている。
こう書いていると、この映画が、ただ衒学的なだけではないか、と疑いを持つ人もいるかもしれない。けれど、ちゃんとそれぞれの登場人物が、問題に対して自分の考えを持っていて、ものすごい勢いでそれを語る。けっして衒学的ではないと僕は思った。
ところで、かなり印象に残ったシーンがある。
主人公がガソリンスタンド(当然いきなりガソリンスタンドに場面転換して)で出会った男が、路上で座り、買ったガソリンをかぶり、マッチで自信に火をつけて、焼身自殺するシーン。これは、間違いなくヴェトナム戦争時の、仏教僧侶の焼身自殺による死の抗議をそのモチーフにしているだろう。燃える僧侶に偶然遭遇した仏教徒たちは、膝まづいて拝んでいた。燃える仏教僧は座禅を組んだまま、いくら燃えてもその姿勢を崩さない。
この僧侶の焼身自殺は授業で実際の映像を見た。衝撃的だった。
路上の処刑とかも見た。頭から漫画のようにピューと血が出て崩れ落ちる人。この処刑は普通の路上で突然起こった。これを観た授業は「映像デザイン論」で、アメリカの60年70年代史についてやっていた時だった。裏のアメリカ史やメディアについて、先生が熱弁を振るっていたのを思い出す。
話がそれた。
そういえば、タイムリーな事に、
ロルカも話に出てきたなぁ。橋の上で出会った男が、ロルカを持ち出して語っていた。
色んな哲学者や詩人、作家などの名前がガンガン出てきて、面白いと思います。それについて、色んな話がなされるし。映画についても興味深く語っていた、哲学っぽい感じで。
知的興奮中なUTは、楽しめた作品です。
観てみる事をオススメしたい一本。