今年は澁澤龍彦展覧会ラッシュの年である。
現在、この展覧会を含めて3つが開催されているし、このあとも多数の展覧会が企画されている。それらは最後に紹介するとして。
カリスマ、という言葉がしばしば使われるが、澁澤龍彦はまさにそれであって、芸術界に影響を与えるほどのカリスマ性を持っていた人。
澁澤龍彦(たつひこ)[1928-1987]は、フランス文学者・批評家・作家。本名は龍雄。(ちなみにフォントの関係で「彦」と表記しているが、正しくは画像の字を見てください)
当時まだ光が然程当たっていなかった西洋のアーティストを日本に紹介したり、コクトーやユイスマンスなどの作品を翻訳して日本に紹介。
マルキ・ド・サドの紹介も行うが、翻訳出版した際、卑猥な内容故に発禁処分を受け、サド裁判の被告人となった。
多くの芸術家と交流を持ち、互いに影響を与え合った人で、三島由紀夫、土方巽、細江英公、瀧口修造、…などあげ始めるときりがない。
所謂王道とは違う、美術史や一般論にとらわれず、神秘や幻想を取り扱うアーティストなどに注目し、光を当てた人。
非常に楽しみにしていた展覧会で、埼玉ナイスッ!(笑)という具合で行ってきました。爆風により電車のダイヤは滅茶苦茶でしたが。
非常に良くできた展覧会で、澁澤ファンはもちろんそうじゃない人も一見の価値がある。
展覧会は編年体で構成され、時系列順に澁澤が注目したアーティスト、交流を持ったアーティスト、の作品が展示してある。
パネル解説も多く詳細で、歴史を追いながら作品群を楽しめる展覧会。
作品数は300点を超える。
観ていて、澁澤龍彦という人の先見性と嗅覚の鋭さに気づく。例え当時知られていなくても、今こうして見て行くと、充分名前の定着した作家は多い。
そしてどの作品も妖しい魅力に満ちているのだ。
シュルレアリスム、エロス、神秘、幻想、澁澤のアンテナの反応した世界が広がっている。
解説を読んでいてつくづく思うのだが、こうして色んなセンスあるアーティストと交流を持ち、互いを結びつけ、活動が歴史に刻み込まれた、というのは極めて大きな功績だろう。
先に挙げた他にも、意外や伊藤若冲や酒井抱一、加山又造など日本美術、池田満寿夫、加納光於、横尾忠則、四谷シモン、などなど他にも沢山、海外では、デューラー、ルドン、クレー、デルヴォー、マグリット、レオノール・フィニ、……んー、他にも列挙しきれない多くの作家の作品が展示されている。
それにしても、功績や為した仕事のこととは離れて考えた時、これだけ多くのアーティストがつまり人間が、澁澤龍彦という人の周りに集まって好意を持ち、親交を持った、ということに、人を惹きつける人間性というものが備わっていたのだろうと思う。なんというか…すごいな、と思ってしまう。
最後の部屋にあった四谷シモンの作品《天使--澁澤龍彦に捧ぐ》を観て泣きそうになって、お腹いっぱいで会場を後にした。
良い展覧会。こういう世界を堪能してください。
なお、最初に述べた展覧会ラッシュというのは…
・澁澤龍彦 カマクラノ日々 @鎌倉文学館 7月8日まで
・澁澤龍彦の驚異の部屋 @ギャラリーTOM 5月20日まで
・澁澤龍彦・堀内誠一 旅の仲間 @C・スクエア(中京大) 6月25日から7月28日
・澁澤龍彦 幻想文学館 @仙台文学館 9月15日から11月25日
[メモ]
澁澤龍彦 -幻想美術館@
埼玉県立近代美術館 (さいたま市)
5月20日まで
巡回:
→札幌芸術の森美術館→横須賀美術館