『
美しい夏』
著:パヴェーゼ 訳:河島英昭 (岩波文庫) 588円
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チェーザレ・パヴェーゼ(Cesare Pavese)[1908-1950]は、イタリアの作家。所謂、
ネオレアリズモの作家として、反ファシズムの容疑で1935年5月に逮捕。26歳。1年間の拘留。
今回の作品はその後の、パヴェーゼ31歳(1940年)の時に書かれたものだが、社会的理由から出版はだいぶ遅れた。
いざ出版されると、翌1950年の6月にイタリア最高の文学賞であるストレーガ賞を受賞
。
その2ヵ月後、自殺して生涯を終えた。
この『美しい夏』は、『流刑』『
故郷』に次ぐ長編三部作の三作目である。最初は、『カーテン』というタイトルだったらしい。
都会に生きる16歳のジーニアと20歳になるかならないかのアメーリアのふたりを中心に進む物語。
イタリア文学に、僕は馴染みが薄い。そもそも翻訳が多くないのだろう。
過度に期待して読み始めたせいか、あまりぱっとしなかったのを覚えている(読んでから時間が経ってしまった)。印象も薄い。
こうしてエントリーを書くにあたって、脳みそ回転させて思い出しながら、ページを繰ってみた。
なるほど。どんどん断片的な記憶が思い出されてつながっていく。
うん。悪くないじゃないか。
書かれているのは、ジーニアとアメーリアの青春である。
思春期特有の、心の単純かつ複雑な動き。
そうだ、この本にはそれが漂っていたんだ。その匂いを今思い出しているんだ。
焦燥。背伸び。
交流の中で、踏み入れるようになったダンスホール。
タバコの味。
画家との恋。
裸になってモデルをすること。
性の目覚め。
少女から女へ。
お互いがお互いを影響し合い、傷ついては、友情を見つけ、都会の生活を送っていく。
二人の目を通して描かれる世界が瑞々しかった。
さらりと読める感じです。