会期が始まって間もない頃、ついにこの展覧会が始まった……との思いを胸に、3度目となる川村記念美術館へ行ってきた。
マーク・ロスコの展覧会。
以前からなんども言ってきたように、ロスコは僕の中での絵画の2トップの1人。
1年以上前から、この展覧会を楽しみにしてきた。それが、ついに…。
上野でリンタロさんと待ち合わせ、電車に1時間弱揺られ、京成佐倉駅へ。シャトルバスを待つも、40分くらいの時間があるので、タクシーで美術館へ向かう。
川村記念美術館といえば、
ロスコ・ルームであるが、今はロスコ展のためロスコ・ルームは閉鎖され、企画展示室にロスコの作品が集中されている。
いつ観ても幅広く、素晴らしい常設展示がまず迎えてくれる。
はやる気持ちを抑え、一通り観る。
ニューマン・ルームは、今までで1番感動を受けた。勿論、今までと全く同じ部屋なのだが、当日の僕の体調とか精神状態とか、色々と影響しているのだろう。
バーネット・ニューマンの《アンナの光》という作品1点のみが、常設展示されている部屋。ロスコ・ルームと並んで、川村記念美術館の目玉の1つである。
幅6メートルを超える作品。
絵を前にすると、瞬間的に、別な世界へとトリップするかのような、それぐらいの強度を持った作品だ。今回はそれを改めて感じた。
そして、いよいよロスコ展の会場。
最初の部屋に、赤と緑の作品1枚が展示されていた。これが、いいっ!
会いにきたよ、ロスコさん。
非常に巨大な画面に、輪郭のはっきりしない四角い色面を描いた作品で有名。
もともとはマーカス・ロスコヴィッチという名でロシア人だったが、アメリカへ移住し活動した。
作品の展示のされ方に、非常に神経質で、照明などにうるさかった。展示環境が気に入らず、作品の納品を取りやめた事も何度かある。川村記念美術館のロスコ・ルームは、そんなロスコの意向どうりにセッティングされているので、非常に暗い。
凄惨な自殺により、NYのアトリエで死去。
先日、作品が戦後の画家としてはオークション最高値(約87億円)を記録した。
さて、次の部屋には、紙に描いたエスキース的な水彩の作品が多数あった。サイズは小さいが、それでも充分な魅力を持つ。
いよいよ次の部屋は、大部屋となっていて、壁の高い位置にぐるりと四方に惜しげも無くロスコの大作が展示されていた。
鑑賞者は、完全にロスコ作品に囲まれる形となる。
展示のされ方や、照明の明るさにより、ロスコ・ルームとは違った印象を受ける。
最後は、黒の作品の部屋。
荘厳な美しさがあった。
ロスコの作品もニューマンの作品も、一見するとどう鑑賞すれば良いのかわからないような作品だ。
あまりに描かれている要素が少なすぎ、シンプル過ぎ、抽象的過ぎ、巨大過ぎる。
しかし、問題なのは、モチーフの複雑さ、技法の饒舌さ、ではない。
そこから立ち現れてくる、表現の饒舌さこそが、絵の強度なのだろう。
それが、凄まじい程、我々は脳で処理しきれず、混乱してしまうが、本当に良い作品というのは、見ていると自然と心が何かに沸き立つのを感じられる。
ロスコもニューマンも、深い深い沈黙が作品と空間に広がっている。
しかし、そこでは、どこまでも鑑賞者との魂の対話が繰り広げられるのだ。
会期は長い。まだ、何度か行くつもりです。
オススメの展覧会。
【参考:過去のロスコ絡みのエントリー】
[メモ]
6月7日まで