アーティスト 加藤雄太 のブログ
展覧会のレヴュー、本の感想、その他制作の日々の模様など。
ホームページは yutakato.com 作品掲載してます。

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充電中
個展も迫っているし、お盆を過ぎたらそれどころではなくなる。
と、いうことで、現在仙台へ帰って来ております。

土曜の夜に着いたのだけれど、その日はそのまま近くの友達の家で、友達の両親も一緒にバーベキュー。
しこたま飲んで、そのまま深夜にカラオケなるものへ。マイケルしていました。
早朝、片付けに友達の家へ戻り、徒歩で帰宅。

いやぁ、帰る地元があるっていうのはいいなぁ。毎回思います。
こうしてあたたかく迎えてくれる友があるのは尚更。

鋭気を養って、大作に向かわねば!

近所を歩いていると、微細な変化が目に入る。
ずぅっと見慣れた風景が変わるのは、どこか心寂しい。
こういう郷愁は、必ずや作品に反映されるであろう。

どうせ暇だから、こっちにいる間にブログも沢山更新できればと…(思ってはいます/笑)。
忘れ去られていたパネル
小品をもういくつか仕上げたら、と思っていたけれど、どうも小品に向かう気持ちにならず、大作のイメージがかなりしっかりとあるので、大作に取り組み始めた。
こっそりと埋もれていた巨大なパネル。こないだまで存在を忘れていたのだけれど、しっかりと寒冷紗が張ってあるということは、だいぶ以前に準備したものらしい。

下地を塗った後、とりあえず茶色に塗りました。
アトリエの様子 200907

さあさあ、どうなることやら。
イメージでは、かなり良い感じになるはず。今度の個展のメインになる予定です。


テレビでは、皆既日食のフィーバーっぷりが。いつか見ると決意。
どうもここ数日だらける。もっとしゃんとしたい。
プレスリリース
ということで、次回個展のプレスリリースです。
僕のホームページのほうにアップしておきました。
「Information」の「これからの展示予定」にアップロードしてあります。
クリックしてダウンロードをしてご覧下さい。PDFファイルです。

ちなみに、色々と試行錯誤してアップしたんですが、もし見れない等ありましたら、ご一報頂けると嬉しいです。

小品をもういくつか完成させて、大作の制作に入りたいなぁ。
会場で、どう見せるかをイメージしながら、大きさとか決めていければと思います。
『META2 2009』展
個展まで3ヶ月を切り、今回はプレスリリースをしっかりしたいので、最近はプレスリリースの制作をしていた。
今日、ギャラリーへ持って行ったのだが、そういえば日本橋の高島屋で行われている展覧会が観たかったので行ってきた。

展覧会『META2 2009』
『META2』という展覧会。
以前から何度か回数を重ねてきたグループ展なのだけれど、現在の全部でメンバーは10人くらい。会期は、前期と後期に分かれていて、それぞれ出品者が入れ替わる。
これの出品者に岡村桂三郎長沢明がいる。もう完全にこの2人の作品を観るのが目的なので、2人が出品している前期である今日行ってきたのだ。

岡村さんも長沢さんも、日本画の材料である岩絵具などを使って描く。でも"日本画家"と言うには違和感を憶える程の、独創的な表現の作品で知られる。それぞれコバヤシ画廊とガレリア・グラフィカの作家だ。

2人とも一点ずつ超大作と2点くらい小品があった。
大作は本当に迫力がある。
両者とも非常にデフォルメした動物のフォルムを描く。そして、非常にマチエールが凝っている作家。
色彩はほとんど押さえられているのだけれど、それでもとことん美しい。

以前にも言ったことだけれど、原初的な絵画の力。荒々しさ。そんなのを感じさせるマチエール。
でも、その絵肌が、それぞれのフォルムや色と非常にマッチしているので、作品として全然雑ではないし、注視してしまう程の魅力を持つ。
絵の要素は本当に少ないシンプルな画面のはずなのに、どうしてこうも深く、そして複雑なのだろうと驚く。

説明的な絵じゃないし、絵画の起源を思わせるような不思議な感覚。
故に、素直に作品に向き合い、感じるままに感じる。

ほとんどだれもいない会場で、食い入るように魅入っていました。
小品欲しかった!!



その後、歩いて京橋、銀座と軽く画廊を回る。
何せ、うだるような暑さ。
ガレリア・グラフィカに行き、無事プレスリリースを渡す。既にメールでは送ってくれているとのこと。
新宿経由で帰宅。電車移動はひたすら読書。暑かったし、さすがに疲れました。



[メモ]
META2 2009
@日本橋高島屋6階 美術画廊X (日本橋)
前期:7月20まで 後期:7月22日〜8月3日
『ゲルニカ ピカソが描いた不安と予感』
本『ゲルニカ ピカソが描いた不安と予感』
著:宮下誠 (光文社新書) 893円
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またまた電車用として持ち歩いていた本です。

いわずと知れたピカソの代表作《ゲルニカ》について書かれた本。
著者の宮下誠さんが、惜しくもついこないだである5月23日に急逝されたことを知り、積んであった本書を読み出したのだ。

世の中には数多くの美術書があるが、この本のように1点の作品のみで完結する本は珍しいだろう。
最初から最後まで、《ゲルニカ》について考察されている。

一応ごく簡単に書いておくと、1937年、スペイン内戦で、スペインの小さな都市ゲルニカが、ナチスによって空爆された。これは、軍事基地を狙ったものではなく、普通の生活地域も対象となり、多くの犠牲者が出た。これが人類史上最初の無差別空爆である。
パリで新聞やラジオにより、この事件を知ったピカソは、当時依頼されていた万博のパビリオンを飾る壁画の画題をこの事件に決め、約1ヶ月で完成させる。それが《ゲルニカ》である。

ゲルニカといえば、ピカソの愛人ドラ・マールが撮影した途中経過の写真があることは、有名である。
この本にはその制作過程を撮影した写真全てや、ゲルニカの為のアイディアスケッチののようなものなど、図版が豊富に収録されている。
そういった資料が日付順に並んでいて、なんと1日1日の変化を追いながら、ピカソがどのようにゲルニカの構想を練っていたかが書かれている。こういった創作の秘密を垣間みれるのも、ピカソらしく大胆に変わる構想を追っていくのも、非常に興味深かった。
本当に、あれこれと試みながら探っているのが分かりました。

著者の意見も独特で、それをズバッと開陳している点も良かった。
変に決まりきった話、というのではなく、私はこう思う、という考えがところどころ述べられていて、聞いていて面白い。

たった1つの作品で、ここまで語らせてしまう《ゲルニカ》という作品のすごさ。
これは取りも直さず、作品が未だに生きている証拠だろう。
本当に良い作品は、そうやすやすと理解し尽くさせてくれない。これは先日の『ゴーギャン展』の際も書いた通りだ。

1つの作品と真剣に向き合うとはどういうことか。
絵画や芸術が持つ力とは何か。
必ずや、本物を観に行きたいと思う。
『今、ここからすべての場所へ』
本『今、ここからすべての場所へ』
著:茂木健一郎 (筑摩書房) 1680円
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今回も電車用に読んでいた本。
このブログでも、何度か登場した茂木健一郎さんの本。
季刊誌『風の旅人』に連載されていたエッセイをまとめたもの。余談だけれど、『風の旅人』は写真家の港千尋さんが、写真誌の中で1番クオリティが高い写真が載っている雑誌、と授業で言っていたのを思い出す。港先生は、未だに僕にとって最大の知の巨人だ。

内容を限定すること無く、様々なエッセイが綴られている。
茂木さんの本は、読むと元気が出るというか、「あぁ、がんばるか」となる。この本もそうだった。

この人はこんなに思索しているのか!と驚く。
無関心でいると、日々はただ淡々と流れていくが、好奇心を持っていたりアンテナを張っていたり、つまりは日常に潜む扉を見つけようという自分いれば、こうも世界は様々なことを思わせてくれるのか。それを常に実践できている、感度の高い人なのだろう。
ロマンティック・アイロニーとは、彼が度々大切だと説くことだけれど、そうなんだなぁ。

ちょっと、世界の透明度というか、輝きが違って見えてくる。

色んなモノと出会った時に、どこまで思いを巡らせることが出来るか。
むしろ、出会いに気づくことが出来るか。
そして、そこから如何に宇宙を拡げていくか。
生を濃密にする鍵の1つは、そこにある気がしている。
すっと視界の抜ける瞬間を大切にしたい。


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目があるから見えるのではない。目があるにもかかわらず見るのである。

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画材購入Day
そういえば、ゴーギャン展に行った日、家を出る前に新作が完成した。

終盤、もう詰め将棋状態で、なかなかどこで筆を置くかが難しかったけれど、無事完成。
最近は、より作品の強度をあげるために、結構厳しく取り組んでいる。以前と同じ、では意味が無いので、前だったら完成にしていただろう状況でも、そこの先に至れるように攻める。

目指すクオリティのヴィジョンがあれば、壊しても何も失われない、ということを実感。

結果、また今までに無い感じの良い作品が出来ました。


今日は、絵具屋がセールだったので、渋谷のウエマツへ行った。
かなり買い込む!
う〜ん、今後も良い作品が描けそうだ。自分でも個展が楽しみ。

その後、新宿の世界堂でも購入。

今日で一気に画材が補充された。


今月の「月刊ギャラリー」をチラリとチェックしてみたけれど、先月とは打って変わって、あまり行くのが無いなぁ。ちょっと残念。
『ゴーギャン展』
今年は、僕の絵画のトップ2人である、ロスコとゴーギャンの展覧会があり、本当に嬉しい。
そして、いよいよ本日から、ゴーギャン展が始まった。

そして、実は僕は、昨夜開かれた、レセプションである内覧会へ行き、一般公開に先駆け展覧会を堪能してきました。

招待状は、2名入れるとのことで、リンタロさんと池袋で待ち合わせ、竹橋の国立近代美術館へ。リンタロさんは、蝶ネクタイで現れるという素敵っぷり。
美術館のレセプションなんて初めてなので、全くどういうものか想像がつかない。受付開始まで駅のカフェで過ごし、いざ美術館へ。

展覧会『ゴーギャン展』

着いてみると、けっこうな人出で混雑。
ロビーで開会式を行い、いざ入場。最初こそ、まとめて入るので、すごい混み具合だったが、人が流れると、ゆっくりと鑑賞することができた。

ポール・ゴーギャン(Paul Gauguin)[1848-1903]は、フランスの画家。一般にポスト印象派の画家とされるが、象徴主義に分類するのが最近の主流である。
見習い水夫などを経験した後、株式仲買人として勤め、妻子も得るが、35歳の時に画家になる決意をし、会社を辞め、妻子と離れ、画業に専念する。
文明社会に強い嫌悪を持っており、文明に侵されていない世界をお求めタヒチにも2度行く。地上の楽園を求めさすらったが、ついに見つけられずに没した。

さて、約50点のゴーギャン作品のみで構成された展覧会は、ちょうどいい点数だし、全てゴーギャンとあって、本当に贅沢な空間。
作品は、大体時系列に並んでおり、ゴーギャンの変遷を追いながら鑑賞できる。

そして、今回の目玉は何と言っても初来日である《我々はどこから来たのか?我々は何者か?我々はどこへ行くのか?》だ。ゴーギャンが遺書として描いた大作である。
1つの展示室がこの作品のみに使われていた。

足を踏み入れる。
感動の対面。
どうしても観たかった絵画のうちの1つ…、いやもしかしたら1番観たかった作品かもしれない。
言葉を失い、じっと見入り、しばし立ち尽くす。

これが芸術か。

ふと後ろの壁には、この作品に関係するゴーギャンの手紙の文章が3つほど書かれていた。
それを読んだ瞬間、涙が込み上げた。
美術館で泣く程の感動を受けたのは、いつぶりだろう。

画集などで、なんども見ている作品だが、目の前のその実作は、多くのことを僕に語りかけてきた。
意味深なタイトルもさることながら、その作品は深い深い森のようだった。

これ以外の作品も、非常に良かったというのが、また素晴らしい。
良質な作品が沢山あったのだ。

鑑賞して思ったのは、一瞬のうちに尽くされる、という感じだろうか。
瞬間的に、言葉や感想を飛び越えて、迫ってくる。
あと、例えば、作品を鑑賞して、観ていれば自分なりの解釈とか感動とか、その作品を受け止めていくわけだけれど、ゴーギャンの作品に関して今回痛烈に感じたのは、ゴーギャンは理解を許さない、ということ。消化しきらせない、と言えば良いだろうか。
見ていると、ぐぐぐっと迫って来て、自分の中に取り込もうと思うんだけれど、かならず溢れてこぼれていく部分があるように思う。
ゴーギャンは、簡単にその全貌を理解させず、絶えずうごめき、「わかった!」なんて言わせてくれないのだ。
とてつもなく巨大な未知の現象に対峙している印象を持った。

しかし、本当に美しい色彩。どこまでも深い画面。
そして、圧倒的な強度。

久々に感動した、オススメの展覧会です。



展示室を出て、ロビーに戻ると、ワインやら軽食がわんさかとある。
ここぞとばかりに、我々2人組は貧乏根性で夕飯の勢いで食べ、再び展示室へ戻り、鑑賞。
そんなことを繰り返し、会場を後にして、池袋へ戻る。

居酒屋で、もうお腹はいっぱいだから(笑)、飲みながらリンタロさんと感想を語り合う。

彼も、やはり泣いていたらしい。帰り道、駅へ向かう途中、込み上げたそうだ。
曰く「感動できる人間で良かった」

リンリン 200907
 ↑ゴーギャン展のレセプション会場で、唯一蝶ネクタイだったリンタロ氏。

展示の感想から始まり、多くの深いトピックを、熱く語り合う。
本気で向き合って話す、至福の時。
魂が高揚する。

今日見たものは、一体なんだったのか。

僕はどうしたいのか。

心洗われ、ヴィジョンが明確になる、良い酒宴だった。



[メモ]
9月23日まで
◇7月の掲示板のふり◇
作品 200907

7月と言えば、毎年この台詞。今年も半分が終わりました!
いやぁ、本当に早い気がします。
年が明けたなぁ、と思って、今年が永遠のような気がして、でも気づくと半分が過ぎ去っているという…。
本当にぼーっとしている時間ってないですね。濃密に生きたい。

この作品、かなり突き抜けることが出来たと思っています。
次の個展、楽しみにしていて下さい。



[画像]
《その場所は現れ》
2009/05/08
岩絵具、板
33.3×24.2cm
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