久々の美術館の展示へ。
まずは渋谷で砂と待ち合わせ。画材屋で少々お買い物。書店にもより、電車を乗り継ぎ初台へ。
東京オペラシティアートギャラリーにて行われている『鴻池朋子展 インタートラベラー 神話と遊ぶ人』。
展示室に入る前に、ベンチには撮影できる作品が。
非常に空いていて、快適に観る。
肝心の内容だが、期待していたのより遥かに良く、素晴らしかった!
鴻池朋子[1960-]は、芸大の日本画専攻を出たアーティスト。なので作品も日本画の素材を使ったものが多い。僕は記憶している限りでは、初めて作品を見たと思う。
展示は道しるべがあり、地底探検のような構成になっている。展示室を進む毎に、地底(?)の様々な空間を訪れる、という趣のもので、展示室の移動も低い幕をくぐって行ったりと、体感型のものだった。
てっきり絵画がメインなのだろうと思っていたのだけれど、空間を巧みに使った構成で、巨大な襖絵やデッサン、立体やインスタレーションなど、本当にバリエーションに富む。
見せ方がうまいんだなぁ。テーマパークに来たような、そんな楽しさがある。
そして楽しいだけではなく、作品も良い。
絵画で言えば、ドクロを中心にした三幅対のような構成の巨大な襖絵。墨や砂子(すなご=金箔を細かく画面に散らす技法)を用いて描かれている。両サイドは、半人半蝶の不思議な生物や半人半狼が描かれている。
小さなデッサンも含め、すごく作品に意味があるように見えるのだけれど、一体なんなのか分からない。でも、どういうことなのだろうと考えさせられてしまう魅力。
理解ではなく感覚の世界に遊ぶ。
他の絵画作品もだけれど、展覧会のタイトルにある「神話」っていうのが、こういった作品に見られるモチーフで、それは作家の内面に存在している私的な神話なのだろうと思った。
ただし、その神話世界が外部のものを突っぱねるのではなく、語りかけてくる。だからこそ、会場を歩いていて、非常に楽しめるのではないだろうか。
まさに我々は、謎の地底世界の内部を、そして作家の内面に潜む神話を、インタートラベラーとして旅する。
展示室に入った瞬間、僕も砂も「すごいっ!」と叫んだ部屋があった。
暗くて、ミラーボールのようなプラネタリウムのような光が、無数に壁一面に写され動いている。頭上には、何かが飛んでいる。足場は一段高くなっていて、見下ろすと部屋の中心には謎の頭部。
しばらく空間に見入っていると、突然、部屋自体がゆっくりと回転し始めた!
いや、違うのである。無数の光の動きに合わせ、中心の頭部が絶妙な速度で回転し始めたので、完全に錯覚に陥り、部屋が回転しているのだと思ってしまったのだ。
本当にすごいスケール感。この部屋を、他に観客が全くいない状態で観る事が出来たのはラッキーだったなぁ。
他にも、色々と作品があった。
なんていうか、深みがあるかと聞かれると、そういったものはあまり僕には感じられなかったけれど、でも、イマジネーションとはこうも自由なものなのか、という驚きと、展示構成の徹底っぷりのすごさ。展覧会の新たな形を見た気がする。
この展示を観た後では、新たなスイッチが自分の中でONになるというか。
現代美術とかインスタレーションとか、そういった作品の重要な力の1つは、まさにそこにある気がする。
新たな世界を提示して、鑑賞者の中にも生むこと。世界への眼差しに、新たな視野を得ること。
行って良かったと思う展覧会でした。
物故、現存、日本画、現代美術、様々な作品たち。
そして、質が高いし、なかなか他の美術館では収蔵していないような作家の作品も見ることが出来る。
画壇の巨匠から話題の現代美術まであるこの収蔵品展は、見るたびに感心する。
オペラシティ偉いな!と。なんかね、こういう姿勢はすごく大事ですよ。作品の受け皿である美術館として、本当に良い。
その後の、廊下部分を使って行われる Project N 。これは知る人ぞ知る有名な展示なのです。素通りすると勿体ない。
若手作家を個展形式で紹介するもので、なかなか長い期間展示させてもらえるのです。
現在は『
山下美幸展』。1979年生まれの作家さんの展示。いつかの「今月の隠し球(『美術の窓』の連載)」で取り上げられていた方。その記事の写真で、非常に気になっていた人なので、こうして実作を観る事ができ良かった。
[メモ]
9月27日まで