昨日。
アルバイトを12時で上がり、上野へ向かう。Hard Rock Cafe でお腹を満たしてから、東京国立博物館へ。14時にN先生と待ち合わせしていた。
『長谷川等伯』展、の開幕前日の開会式、内覧会へ行ってきた!
能登七尾の出身で、京に出てからは、大徳寺や本法寺に出入りして宋元画を学んだ。大徳寺は千利休のと親交の縁で。雪舟の弟子等春に学び、自身は五代雪舟を名乗った。
聚楽第では当時の最大派閥である狩野派と対立。衝突して狩野派を誹り、宮廷の造営では永徳らから阻害されるなど、かなり奮闘した画家である。
桃山から江戸期にかけては、やはり狩野派や琳派が有名だが、負けず劣らず実力者で、壮麗な作品を残した。
さて、展覧会。
第1章から第7章までで構成され、初期の仏画から金壁画、そして水墨画と、長谷川等伯の一生を見ることができる。展示替えもほとんど無いようで、80点近い作品を見ることができる、充実した構成だった。
仏画も良いが、やはり屏風絵とかになると、どんどん作品が力を増して、「芸術」として魅力を増す。
改めて多くの作品を見ていく中で、まず驚いたのはバリエーション。1人の画家が描いたとは思えないくらい多様である。筆法も然り、内容も然り。そして、大画面の中の隅にいるような小さな人物なんかも、驚くべき力量で表情とかが描かれていて、本当に上手いとしか言いようが無い。
ある時は、狩野派を思わせる岩の荒々しい直線的な表現。一方で優雅な曲線の作品。ぐしゃっと破墨を活かした作品。なんでもこなせる人だというのがよくわかる。
今回、一番見たかった《楓図》(《楓図壁貼付》)も、出品されていてついに実物を見ることができた!
中央にぶっとく貫く木の幹。しかも、大胆すぎるくらいのトリミングで切れている。切れた枝先が、また画面に降りてきているんだよね〜。散りばめられた紅葉と種々の草花。黄金の背景。King of 装飾美である。
《萩芒(はぎすすき)図屏風》も、久々に実作見れたけど、やっぱりよかったなー。右隻は萩、左隻は芒。それだけ。何とも素敵な六曲一双だ。大胆で力強い《楓図》に対し、静寂で優雅な作品。
有名な《枯木猿猴図(こぼくえんこうず)》も出ていて、こちらは金箔地の前者2作に対し、水墨の世界。真っ白な背景に、猿が描かれている。
酔って「でやぁ〜」とやったようにしか思えない破墨の筆致なんだけれど、それが見事に絵になっているんだからすごい。筆触自体にエネルギーが宿っていた。
あとは、何と言っても、最後に展示されていた《松林図屏風》でしょう。しかも今回は《月夜松林図屏風》も合わせて出品されていた。
《月夜〜》は、左上にうっすらと月が描かれているのだけれど、本当に静かな世界で魅了された。
でも、そのすぐ近くの《松林図屏風》を見た時、それすらぶっ飛ぶくらいガツンとやられた。
以前の
『対決 巨匠たちの日本美術』展で見た時も、長々と見入っていたけれど、今回見た時、「こんな作品だったか!!」と驚いた。前回見た時よりも、何倍も良く感じられたのだ!この、初めて本当の良さが見えたかのような、不思議な感覚はなんだったのだろう。一瞬視界に入っただけで、「ああ、これだ」と思うくらい、圧倒的な質感が瞬間的に立ち上がってきたのだ。
こんなに描かれている木の数は少なかったっけ?なのに、この余白の深さはなんなんだ?幸せな出会いの瞬間である。
他の作品たちが、どちらかというと構成などで見せているのに対して、この作品は圧倒的に絵の向こうへと続く永遠がある。
深く、静か。思わず、耳を澄ます。
辿り着いた境地としか言いようが無い。
他にも、多くの優れた作品があり、非常に楽しめた、充実した良い展覧会でした。
感じたことは多いけれど、本当に優れた芸術作品は、容易に言語化できないらしい。
僕は、咀嚼し、考え続けていこうと思う。
会期も短いので、混むだろうけれど、是非行くべき展覧会だと思います。
見終わった後、N先生と上野駅の飲み屋へ。
「ビールを1杯だけ飲んで帰ろうね」とのことだったけれど、結局へべれけになり、5時間以上いた気がする(笑)。
それだけ、話が熱く盛り上がった。本当によい話ができたと思います。
ここで記すと、展覧会の記事なのに長くなるから、このことはまた別に書こう。
《楓図》
《萩芒図屏風》(右隻)
《萩芒図屏風》(左隻)
《枯木猿猴図》(右幅)
《松林図屏風》これはやはり実作じゃないと…
[メモ]
3月22日まで