アーティスト 加藤雄太 のブログ
展覧会のレヴュー、本の感想、その他制作の日々の模様など。
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『ボストン美術館展』
 今日は、まるで初夏のようだった!
 洗濯をし、六本木へ向かった。

 六本木ヒルズ、森アーツセンターギャラリー、『ボストン美術館展』。
展覧会『ボストン美術館展』

 17日に始まったばかりの展覧会。平日の午前だし、余裕だろう……、と思っていたら、入場すると混んでいるではないですかっ!予想外のフィーバー!
 が、人が多いとはいえ、充分観れる範囲であったので、今日行って良かったと思う。

 今回の展覧会は、その名の通りボストン美術館の所蔵品による展覧会。
 大抵、なんちゃら美術館展っていうと、まあ超凄い作品とかはやっぱなかなか貸し出されなくて、作家のネームバリューはすごいけど作品は……、となりがちである。が、今回は、ボストン美術館が大規模な改修中なので、それに伴い実現した豪華な展覧会なのだそうだ。

 入場してみて、会場を回っていると、たしかに錚々たる画家たちが並んでいる。
 レンブラントにティントレット、グレコにマネ、ルノワールにドガにミレーにモネにゴッホにセザンヌ…と。
 が、僕は何故かパッとしなかった。
 魂に響いてくる作品がほとんどなく、ただ“展示されている”だけという印象。

 もちろん、中には長く見てしまう作品もあった。
 でも、やはり全体の印象は、パッとしない。

 すらすらと進むうちに、観終わってしまった。

 何が原因か、はっきりとは分からないが、こういう展示では感動は呼ばないと思う。

 僕は見る前から結構楽しみで期待してしまっていた、というのもあるので余計そうかもしれないが、ちょっと拍子抜け。
 でも、やっぱり確かに、ボストン美術館のこれらのメンバーの作品を東京で見ることが出来るのだから、贅沢な機会ではあるのだろう。


 余談だけれど、美術館を見る前に、六本木ヒルズ内で、明日発売の3DテレビVIERAのお試しが出来たので、やってみた。
 3D初体験でした。へぇ〜。でも、あんま好きじゃないなぁ。
 あのゴーグルをかけて、一家がテレビ見てる様子とか想像すると、凄く抵抗感。



[メモ]
6月20日まで
『マネとモダン・パリ』展
 先日、丸の内に4月6日にオープンしたばかりの新しい美術館、三菱一号館美術館に行ってきた。赤煉瓦の、素敵な外観の建物。
三菱一号館美術館 1

三菱一号館美術館 2

 観た展覧会は『マネとモダン・パリ』展である。
展覧会『マネとモダン・パリ』

 エドゥアール・マネ(Édouard Manet)[1832-1883]は、フランスの画家。よく「近代絵画の父」と言われたりする人物で、美術を語る上では外せない、超重要人物である。
 美術史では印象派に分類される。ただ、マネ自身は印象派展には、1度も参加していない。印象派の詳しいことについては、以前書いた「UTによる印象派講座」を参照していただくとして、当時フランスでは絶対権力としてサロンがあり、画家として名を成すにはには、このサロンへの入選が絶対条件だったのだけれど、それに反発を持った画家たちが印象派展を開催する。1863年のサロンでは、ナポレオン3世が「落選展」を開催し、そこにマネの有名な作品《草上の昼食》も落選作品として出品された。1865年のサロンには《オランピア》が展示された。この両作品とも大変なスキャンダルとなり、マネは笑い者となる。また、1867年のパリ万博のサロンの審査に抗議して、万博会場の近くで個展を開催したし、つまりマネはかなりの革命的な存在であり、新しい価値観を生み出したわけである。
 そんなマネの周りには、啓発された画家たちが集まって、バティニョール界隈のカフェ・ゲルボアに集うようになった。このなかには、モネやルノワールなど多くの有名な画家がいる。そんな画家たちが中心になり印象派展を行っても、マネは1度も参加しなかったのだ。つまりは、個人として公式に認められること、サロンでの入賞、このことにマネはこだわって、画家としての出世の道が途絶えることを恐れ、反体制的な新たな活動には加わらなかったのだ。
 1866年には、小説家のゾラと出会い、ゾラはサロンに落選したマネを擁護する文章を書いたが、このことによって、ゾラは記者の職を辞職に追い込まれた。
 以上のように、ザッと簡単にいくつかの事柄を挙げても、大きな存在だった画家であるし、実際作品はそれまでのアカデミズムとは違い、平面的な塗り、太い輪郭線、デフォルメ、主題を無視したヌードなど、美術の流れに大きな影響を与えた。
 1878年には、万博の審査を嫌い、100点の自作で個展を計画。作ったカタログに載せたスローガンは「1000人の強みか、それとも1人我が道を行くか」だった。

 さて、マネのことが長くなったけれど、展示の話。
 美術館は凄く立派で、展示にも期待に胸を膨らませて入った。
 あんまり調べずに行ったので、行く前はマネの作品は数点だと思っていた。が、実際に観てみると、ほとんど全部がマネの作品!豪華!!
 マネの重要作品、というか、個人的に気になっていた作品とか結構多く来ていたので、かなり楽しめた。
 やっぱり実作を前にすると、ずっと見ていたくなるような、そんな作品。

 問題点は、美術館の構造だろう。
 もともとあった建物を、可能な限り再現したのが、この三菱一号館美術館である。そのため、展示室は美術作品を展示する空間、というこを前提にしていない。
 なので、各展示室が狭いっ!それも、驚く程!!これは大問題だと思う。

 幸い、僕の行った時は、人は沢山いたけれど、でも充分1作1作をじっくりと観ることが出来る余裕があった。なので、特に見たい作品とかは、たっぷりと見る事ができた。マネの展覧会で、こんなことが出来て本当に良かったと思う。
 でも、今後展覧会の紹介とかがされていって、もっと人が混雑したら、……正直動くことが難しいレベルになるのではないだろうか?と心配している。
 なので、観に行く方は、なるべく会期の終盤になる前に行くことをオススメします。
 展示内容自体は良かったです。

三菱一号館美術館 3
 美術館の中庭。


[メモ]
三菱一号館美術館 (丸の内)
7月25日まで
『長沢明展』
 アートフェア東京とか、色々なギャラリーとかまわっていたけれど、昨日観たこの展覧会は本当に良かったので、まずはこれを記事にしよう。

展覧会『長沢明』2010

 長沢明さんの個展。
 長沢明[1967-]は、画家。岩絵具を使って描く、所謂日本画のコンテンポラリーの作家。元々は抽象表現だったが、近年は虎などをモチーフにした作品でとても有名。

 僕がよく個展をさせて頂く(今年の秋もやりますよ!)ガレリア・グラフィカの作家さん。非常に楽しみにしていた個展である。
 今までもこのブログで、何度かLoveを公言してきた気がします。
 1階と2階の両方を使っての展覧会。1階はとても大きな大作。2階は小品、という構成だった。

 長沢さんの作品は、独特のマチエールがすごい。そこに、非常にデフォルメされた動物が描かれる。そのため、古代の洞窟壁画を思わせる。そのような、絵画の持つ原初的な、起源のような、不思議な雰囲気を持ちながら、でも確かに現代の作家が描いた1つの表現がそこにはあるのだ。
 原初的な力故だろうか、力強くて、まさに凝視に耐える作品たち。
 食い入るように見つめた。

 1階は、作品のスケールもあって、作品の雰囲気と相まり、作品によって場が表出されている。
 2階の作品もユーモラスで、小さいけれど、強い。

 すごい刺激されたなぁ。こうして吸収したものが、果実として結実することを。



[メモ]
5月1日まで
 更新が滞ってしまった。どうも最近ブログ無精でいけない。

 ちなみに、前回の記事「ホモ・サピエンス・パフォーマンス」は、エイプリルフールということで、お気づきの方もきっと多いでしょうが、嘘記事でした。
 動物園に行ったのは本当だけれど、そこで行われていたアート・パフォーマンスは架空のものです。
 尊敬する某氏に倣い、毎年4月1日に、読んで不快にならず、かつ、何かしら考えさせたり、ほっこりとあったかくさせるような、そういうウソを書く、という素敵な習慣を初めてみたいと思いながらも、ハードルが高く毎年挫折してましたが、今年こそは!とやってみたのです。こうして、フェイクだと言うとしらけるけれど、一応公表しておきます。1日はアートフェア東京に行ったのだけれど、出発する前に、だだだーっと書きました。
 また来年の4月1日が楽しみです!

 最近は、前述したようにアートフェア東京に行ったり、ギャラリーを巡ったりしてた。
 そして、新作に向けて準備をしたり、ドローイングしたりしている。

 朝、日本画木曜会やバイトへ行く道すがら、ピカピカの制服を着た学生や、小学生が、親と一緒に入学式へ行く姿を、ここ最近よく見かけた。
 ああ、新しい季節だ。春だ。と香しい。

 桜も、いつの間にか満開を迎えてしまった。
 ぼーっとしていても、季節は巡る。春は来たのだ。

 やりたいことがたくさんある。だからやろう。ふつふつとしている、この感じ。胎動。
 そして、ブログももっと更新するぞ。
ホモ・サピエンス・パフォーマンス
 twitterに、色々と動物たちの画像をあげてましたが、昨日は動物園へ行ってみた。

 久々の動物園で、新鮮な感覚を味わっていたら、地面にじっとうずくまっている人がいた。
 ちょっと妙だったので、通行人の振りをして近寄ってみると、その人のすぐ横に、「ヒト ホモ・サピエンス」と書かれた小さなスケッチブックが置いてある。
 すぐに、ああ、この人はアーティストで、パフォーマンスをやっているんだ、と分かった。

 そのスケッチブックの逆側には、「視点を変えることで見える景色」「束縛された環境で、本来持っていた大きな世界について思いを馳せる」「見るものと見られるもの」と書かれた別なスケッチブック。
 これを読んでこのパフォーマンスは、動物たちの解放とかそういうことではなく、もっと人間にとって根本的な哲学を持って訴えかけているんだ、と思った。特に現代日本において考えを巡らすと、色々と味わうべきものがある。自由の意味。

 しばらく眺めていたら、いつの間にかギャラリーが集まっていて、少々の人だかりが出来てしまっていた。
 動物園という私有地の中だし、大丈夫かな、と思っていたら、案の定、園のスタッフと思われる人が数人やって来て、パフォーマーに聴取を始めた。

 あ〜ぁ、と思っていると、「今回だけだよ」というスタッフのおじさんの声が微かに聞こえた気がする。
 その後も、そのパフォーマーは、アートを続けだした。

 アートへの寛容の精神を見た瞬間。
 人の上に立つ人は、まるで決まり事のように、頭ごなしにダメ!ダメ!ではなく、こういう心を持って頂きたい。
 美しい瞬間に立ち会ったと思う。
◇4月の掲示板っぽく◇
作品 201004

 4月。
 陽射しが暖かになってきた今日この頃。新年度の始まりということもあって、身の引き締まる思いの方も、多いのではないでしょうか。

 画家という職業柄、特に何か身辺が変化する、ということは無いけれども、それでも、これからの日々に思いを馳せ、やってやるぞ、と気合いを入れてみる。

 去年散って惜しんだ桜も、しっかりと再び花を咲かしている。
 頑張ろう。



[画像]
《新月の夜に》
2010/01/20
岩絵具、板
27.3×19.0cm
作家蔵
《A New Moon Night》
Powdered mineral pigments on wood
Artist's collection
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