さて、もう1つ行っていた展覧会を紹介しておこうかな。
残念ながら、もう会期は終了してしまったけれど、毎年観に行ってこのブログでも書いている桑原弘明さんの個展を。
桑原弘明[1957-]は、ボックスアートの作家。
真鍮の手のひらサイズの箱の中に、極小の世界を築き上げ、箱に付いている覗き穴というかスコープから内部を見る、という作品。これが、本当に素晴らしい。
もともと知る人ぞ知る作家さんだったのだけれど、口コミとかでどんどんと広まったようで、数年前からは、初日完売のアーティストとなった。
真鍮の箱の中は、そのまま覗いても光源がなく真っ暗なので、箱の周りに空いているライト専用の穴からペンライトで光を当ててもらうことによって、内部が初めて見えるようになる。
そして、ライトを当てる穴は複数あるので、何処から光を当てるかによってライティングが変わるのはもちろんなのだが、ホント不思議な程見えてる世界が激変するのだ。
この辺は、やっぱり実際に体験しないとなかなか飲み込めないかもしれない。
とても小さいけれど、体験型のアート。そしてそれは、自分で自由に体験する、というものではなく、第三者に光を当ててもらうことによって初めて体験できるものなのだ。
今回も、本当に緻密で精巧な世界が箱の中に広がっていた。実際、中のモチーフたちは1ミリとかそういう大きさ、或いは物によってはもっと小さいサイズである。
それらが、スコープを覗いてみると、本当に精巧で、例えば壁の質感とか、ちっちゃなリンゴとか、星空とか、噴水とか、机とか、驚く程のクオリティをもったミニチュアたちが、見事に世界を作り上げている。それら全てが、手のひらより小さい箱の中に収まっているのだ。
しかも、それら見える景色が、どれもこれもセンスいいんだよ〜!
そういった世界が、光の加減で様々に表情を変える様は、1度体験するべきだし、体験すると病みつきになるだろう。特に初めて経験したときの驚きと感動は、きっと想像以上だと思う。
ミクロコスモスとしての、極小の真鍮の箱。マクロコスモスとしての、箱の中に広がる世界の大きさと密度。
そのギャップも、そこに詰まった非常にポエティックな世界も、大変魅力的なのだ。
特に今作は、光を当てる穴が多めで、より沢山の変化があったように感じた。
また来年の展覧会が楽しみです。
おすすめでした。
---参考 以前の桑原弘明展の記事---
[メモ]
会期終了