アーティスト 加藤雄太 のブログ
展覧会のレヴュー、本の感想、その他制作の日々の模様など。
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『桑原弘明展』
 さて、もう1つ行っていた展覧会を紹介しておこうかな。
 残念ながら、もう会期は終了してしまったけれど、毎年観に行ってこのブログでも書いている桑原弘明さんの個展を。

展覧会『桑原弘明』2010

 桑原弘明[1957-]は、ボックスアートの作家。
 真鍮の手のひらサイズの箱の中に、極小の世界を築き上げ、箱に付いている覗き穴というかスコープから内部を見る、という作品。これが、本当に素晴らしい。

 もともと知る人ぞ知る作家さんだったのだけれど、口コミとかでどんどんと広まったようで、数年前からは、初日完売のアーティストとなった。

 真鍮の箱の中は、そのまま覗いても光源がなく真っ暗なので、箱の周りに空いているライト専用の穴からペンライトで光を当ててもらうことによって、内部が初めて見えるようになる。
 そして、ライトを当てる穴は複数あるので、何処から光を当てるかによってライティングが変わるのはもちろんなのだが、ホント不思議な程見えてる世界が激変するのだ。
 この辺は、やっぱり実際に体験しないとなかなか飲み込めないかもしれない。
 とても小さいけれど、体験型のアート。そしてそれは、自分で自由に体験する、というものではなく、第三者に光を当ててもらうことによって初めて体験できるものなのだ。

 今回も、本当に緻密で精巧な世界が箱の中に広がっていた。実際、中のモチーフたちは1ミリとかそういう大きさ、或いは物によってはもっと小さいサイズである。
 それらが、スコープを覗いてみると、本当に精巧で、例えば壁の質感とか、ちっちゃなリンゴとか、星空とか、噴水とか、机とか、驚く程のクオリティをもったミニチュアたちが、見事に世界を作り上げている。それら全てが、手のひらより小さい箱の中に収まっているのだ。
 しかも、それら見える景色が、どれもこれもセンスいいんだよ〜!

 そういった世界が、光の加減で様々に表情を変える様は、1度体験するべきだし、体験すると病みつきになるだろう。特に初めて経験したときの驚きと感動は、きっと想像以上だと思う。

 ミクロコスモスとしての、極小の真鍮の箱。マクロコスモスとしての、箱の中に広がる世界の大きさと密度。
 そのギャップも、そこに詰まった非常にポエティックな世界も、大変魅力的なのだ。

 特に今作は、光を当てる穴が多めで、より沢山の変化があったように感じた。
 また来年の展覧会が楽しみです。
 おすすめでした。


---参考 以前の桑原弘明展の記事---
2005年12月(作品の詳細が見れるページへのリンクあり)



[メモ]
ギャラリー椿 GT2 (京橋)
会期終了
MISA SHIN GALLERY での Ai Weiwei 展
 観に行ってから間が空いてしまったが、まだ開催中の展覧会であるし、新ギャラリーなので、ご紹介しましょう。

 白金高輪といえば山本現代などが入るギャラリー・コンプレックスビルが有名ですが、そこからそう遠くないところに、新しくギャラリーが出来た。
 MISA SHIN GALLERY。ディレクターはアートフェア東京の前エグゼクティヴ・ディレクターを努めた辛美沙さんである。
 そして、オープニングを飾る展覧会は、なんとアイ・ウェイウェイの個展だ!
Misa Shin Gallery

 アイ・ウェイウェイ(艾未未)[1957-]は中国の現代美術家。世界的なビッグアーティストである。社会活動にも力を入れているので、当局から監視をされ、軟禁状態だった時期もあるし、暴行を受けたなどのニュースを耳にしたこともある。

 最近の日本国内での展示では、原美術館や森美術館での個展が記憶に新しいが、日本のコマーシャルギャラリーで個展をするのは今回が初。楽しみに観に行った。
 室内に、巨大なキューブ上のシャンデリアがある Cube Light という作品。貴族の象徴としてのシャンデリアを、アートに変換することでメッセージを発信していた。

 最初の個展がこれだけのビッグネームだっただけに、これからの展覧会も楽しみなギャラリーがまた1つ増えた。


[メモ]
MISA SHIN GALLERY (白金)
2011年1月29日まで
そうこうしているうちに
 もうクリスマスも終わり、一気に年末そして新年へと向かう時期ですね!

 復帰して前回の記事を書いてから、今度は風邪を引いてしまい、長らく体調を崩しておりました。
 そんなこんなで、結局更新もままならず、展覧会レヴューとかなかなか書けずにきてしまったですよ。すいません…。

 無事、体調も回復してきたし、今夜くらいからは時間が取れそうなので、年の瀬の締めとしてってわけでもないですが、いくつか記事書いていって今年を締めくくろうかと思うので、是非今年の残り僅かな時間もおつき合い下さいませ。
『小谷元彦展:幽体の知覚』
 タイムラグが出来てしまったが、以前行っていた展覧会から。

 森美術館で開催中の『小谷元彦展:幽体の知覚』。
展覧会『小谷元彦 幽体の知覚』

 小谷元彦[1972-]は、京都府出身の彫刻家、現代美術家。かなり若いのに、ヴェネツィア・ビエンナーレの代表などのキャリアを持つ国際的に活躍するアーティスト。

 今回は、森美術館を使った大々的な個展で、半年以上前から楽しみにしていた。
 初期の作品から最新作まで展示されている。

 展覧会タイトルにも入っているように、「幽体」すなわち実体のないモノや現象などを作品として視覚化したものが多く、それらが形を持ち提示されていることにより不思議な印象を受ける。

 また、作品を見る我々の視覚を通して、視覚を越えた感覚を呼び起こさせるものも多い。
 特に皮膚感覚だろうか。
 例えば、髪の毛で編まれたドレスとか。

 狼の剥製で作られたドレスも印象的だった。

 兎に角、1つのイメージから、多重な世界観を生み出して、それが時には皮膚感覚に突き刺さってきたり、或いはそれらの存在そのものについて考えさせられたり、といった具合に凄くトリッキーな印象を受けた。

 様々な表現形態で初期から現在に至るまで作品にしてあるのだけれど、観ていて思ったのは、その根底に流れる核のようなものの一貫性。つまり、なにかブレていない確固としたものが、ピーンと1本全体を貫いているんだよね。
 もちろん表面上の見た目とかそういうものは色んな表情を持っていて様々な作品があるんだけれど、それでも「ああ、これは彼の作品だ」と思わせる強い思想のようなものがそこに流れていて、ブレてないのだ。

 全体として「妖しい」。まさに幽体。こういった美しさってなかなか難しいと思う。



[メモ]
森美術館 (六本木)
2011年2月27日まで
ご無沙汰です
 最近は色々とばたばたしていました。
 仙台に帰ったりして、先日戻って来たばかりです。

 12月はまったりと行く、などと言ったけれど、ようやく落ち着けそうかな、と言う感じです。

 ブログも復活します。
 記事にしたいことも書けずにいたので、ちょっとずつアップできればと思います。

 とりあえず、ご報告まで。
指の間からこぼれてしまったような
 つい先日、実はまた川村記念美術館の『バーネット・ニューマン展』へ行ってきた。
 今回は、リンタロさんと共に。

 現在リンタロさんは名古屋在住なので、当日の朝新幹線で東京までやって来て合流し、高速バスで千葉の佐倉市へ。

 ニューマンもロスコもじっくりと鑑賞したわけだが、前回からさほど間を空けずに観たにも関わらず、とても新鮮な思いがした。
 そう。本当に良い作品は、たとえなんど観に行っても初めて見るかのような新鮮さがある。
 なぜなら、本当に良い作品というのは、1度や2度見ただけでは、その正体を掴ませてくれない。そうやすやすと、理解され尽くせないものだ。
 それは、絵の表面的な単純さ、殊にニューマンやロスコはそうだが、そういった単純さとは別に、その作品がそれだけ複雑だということ。
 その印象や感想を、言語化できないもどかしさ。言い換えてみれば、言語化できずこぼれ落ちてしまったもの。手で水を掬って、指の間からこぼれてしまったような、そのこぼれたものの多さこそが大切であり、それと向き合いたい。

 それにしても、ロスコの作品、永遠の面積と奥行きがあるように見えるけど、側面見るとその薄さにビックリするね。絵が与える絵の印象とのギャップがすごくて。

 ニューマンのインタヴュー動画で印象に残った言葉は「空間を明言したい」。
 それと、インディアンの洞窟の話。


 観終わって、東京へ戻って来て、八重洲ブックセンターで『オン・ザ・ロード』をリンタロさんに買わせる。
 夕刻の東京のビルのあいだを2人で歩く。
 彼が名古屋へ行く前はあたりまえだったけれど、今はそうではなくなった。
 そんな状況がそう思わせるのだろうか。リンタロさんと歩く東京の街は、すごくフィットして心地よい。ああ、この風景じゃなきゃ、と思う。ここにはここの自然がある
 行く年月、進み、変化し行く自分たちを思いながら、いつものように大衆居酒屋へ消え入った。
◇12月の掲示板のような◇
作品 201012 その2

 いよいよ2010年の最後の月となりました。
 いやぁ、……本当に早いね。

 僕は、11月で忙しさのピークをとりあえず終えたので、今月はややまったりといければと思っているけれど、どうなることやら
 とりあえず、展覧会へ行ったり、本を読んだりしつつ、制作したい。

 今年を悔いなく締めて、来年への弾みをつけましょう!!



[画像]
《灯台》
2010/06/26
岩絵具、パネルに寒冷紗
22.0×27.3cm
個人蔵
《a Lighthouse》
Powdered mineral pigments on cheesecloth mounted on panel
Private collection
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