アーティスト 加藤雄太 のブログ
展覧会のレヴュー、本の感想、その他制作の日々の模様など。
ホームページは yutakato.com 作品掲載してます。

<< August 2015 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

『遠藤利克 空洞説―水の座』
 一昨日スカイ・ザ・バスハウスへ行ったんだけれども、18時閉廊に間に合わなかったのでリベンジ。

展覧会『遠藤利克 空洞説ー水の座』

 『遠藤利克 空洞説―水の座』という展覧会。

 どうしてもこの展示は観ておきたかった。それはこの夏行く予定の『越後妻有アートトリエンナーレ2015』で「森の学校キョロロ」にこの遠藤さんの作品があり楽しみにしているのだ。

 今回の「空洞説」というシリーズは10年前にここスカイ・ザ・バスハウスで行った個展から始まったらしい。

 さて、今回の展覧会、ギャラリー中央の床をくり抜いて空洞を作り、そこにひたひたになるまで水を満たし、そこに鉄の板を乗せた作品と、壁には同じ鉄の素材で出来た棺型の箱が垂直に展示されている。
 つまり、部屋の中央に水を満たし大きな鉄の板で塞いだ穴があり、その正面に対峙するように棺型の箱がある。この2つの関係性でのみ作られたインスタレーション。

 大きな2つの空洞という“ゼロの質量”が作り出す空間は、その物質性やミニマルさから、アニッシュ・カプーアや、NYのDia:beaconで観たリチャード・セラマイケル・ハイザーに通じるものを感じ、とても好きなタイプの作品だった。

 空(くう)とか、消失した質量を、逆説的にとても重厚に感じさせ、広がりや深みを与える作品は、すごくラディカルな衝撃を受けて、また同時にとてもシンプルな構成であるが故に瞑想に誘われる。

 水面が作る即ち完全な平面と、屹立する壁に設置された棺の垂直、この水平と垂直の関係は神秘主義を思わせる。
 とても基本的な2つのライン。
 一方は空ではありながらも水を満たしてある言わば変容した質量と、完全に空の棺。
 兎に角、この面と壁の呼応が深い思考へと誘い、たった2つしか作品の無い空間が、十分な密度を持った空間へと変わっていた。

 考えてみると、あのホワイトキューブの空間自体が、大きな1つのvoid(空虚)な空間であり、僕は作品を観てみるつもりだったが、実は作品の1部となっていたのかもしれない。

 オススメの展示。でも、8月1日まで!!
 森の学校「キョロロ」、楽しみです。



----------------------
遠藤利克 空洞説―水の座
SCAI THE BATHHOUSE(上野)
8月1日まで